政治など公共の領域に宗教が影響を及ぼすべきではないとする考え方。この考え方を支持する人々は世俗派と呼ばれる。一般に、政治と宗教が相互に介入し合わないようにする政教分離と同じような意味で使われることが多いが、個人でも公の場で宗教的主張をすることを禁じるなど、より厳格な切り離しを求めることもある。政治や教育などから宗教色を排除することが憲法で規定されているフランスが、世俗主義的体制の典型例とされる。そのほか、国内に多数の宗教、宗派の信徒を抱えるインドや、1923年の共和制移行後に脱イスラム化を進めたトルコなどが代表的。特にトルコは、「建国の父」といわれる初代大統領ケマル・アタチュルク自身が憲法からイスラム教を国教とする条文を削除し、宗教法廷や宗教教育を廃止するなど、宗教勢力の排除を強力に推進したこともあり、長く世俗主義を国是としてきた。しかし、2003年3月に就任したエルドアン首相は、アルコール販売の制限や、大学内での女性のスカーフ着用容認など、イスラム教の伝統的な価値観に基づく政策を実施。13年5月には同氏の政治姿勢に反対する世俗派の市民らが、イスタンブールなどの都市部を中心に大規模なデモを起こし、国際的な注目を集めた。