2016年1月16日に投開票が行われた、台湾の最高指導者である総統と、副総統を選ぶ選挙。総統の任期は4年(2期まで)で、選挙は総統と副総統が一組になって立候補するしくみ。馬英九(マーインチウ)政権を支える与党の中国国民党(国民党)は当初、洪秀柱立法院副院長を総統候補としていたが、中国との統一を示唆するような発言などで支持率が低下し、朱立倫(チューリールン)党主席を新たな総統候補とした。一方、野党の民主進歩党(民進党)は蔡英文(ツァイインウェン)主席、親民党は宋楚瑜(ソンチューユイ)主席を候補とした。2008年から8年続く国民党が政権を維持できるか、民進党が政権を奪回するのかが注目されたが、選挙の結果、民進党の蔡氏が689万4744票、得票率にして56.12%を獲得し、381万3365票の朱氏、157万6861票の宋氏を退けて圧勝。民進党が8年ぶりに政権を奪回し、台湾史上初の女性総統が誕生した。就任は5月20日。蔡氏は1956年台北市生まれ。父方が中国広東省から台湾に渡った客家(はっか)で、台湾先住民族の血も引く。法律学者から政治家に転身し、08年に総統選挙で敗れた民進党の主席に就任した。台湾独立志向が強い蔡氏だが、拙速な独立も対中融和も進めず現状維持の方針を打ち出したことで、支持を拡大。対中融和を進めてきた国民党に大差をつけることとなった。ただし民進党は02年に台湾と中国はそれぞれ別の国であるとする「一辺一国論」を主張、中台が「一つの中国」の原則を確認したとされる「1992年合意」を受け入れておらず、今後、蔡政権が中国とどのような関係を築いていくかに注目が集まっている。また、台湾の立法府である立法院(日本の国会にあたる)を構成する立法委員の選挙も同時に行われ、民進党が113議席中68議席を獲得し、改選前の40議席から躍進。初めて単独過半数を獲得して第一党となった。一方国民党は、改選前の64議席から大幅に議席を減らし35議席を獲得するにとどまった。14年に立法院を占拠するなど大規模な反政府デモを繰り広げた「ひまわり学生運動」から発展した新党、「時代力量」も5議席を得た。