2016年7月15日に発生したトルコ軍の一部軍人によるクーデター未遂事件。同日夜、トルコ軍の一部勢力が国営テレビ局を占拠し、クーデターにより政権を掌握したと発表。同国最大の都市イスタンブールではボスポラス海峡大橋を封鎖し、首都のアンカラでは国会を爆撃した。トルコ軍が19日に発表した声明によれば、トルコ国家情報機構(MIT)がクーデター計画を事前に察知して軍幹部に通知。それに気づいたクーデター実行犯は、当初16日午後3時に予定していた作戦開始を15日午後9時に前倒ししたという。休暇で同国南西部のマルマリスに滞在していたエルドアン大統領は、イスタンブールに逃げる途中、スマートフォンのビデオ通話サービスを通じて民間テレビ局の番組に姿を映し出し、外へ出て反乱勢力に抗議するよう、市民への呼びかけを行った。これに呼応した市民たちがクーデターに抗議する行動を取り、政府および治安部隊による鎮圧が行われたことから、16日になると反乱軍が相次いで投降を始め、クーデターは未遂に終わった。この事件による死者は290人以上、負傷者は1400人以上に及んだ。事件後、エルドアン政権はクーデター未遂への措置として大規模な粛清を実施。1万人を超える軍関係者や司法関係者を拘束し、教育省職員2万2000人を解雇するなど、22日までに6万人以上に処分が下された。エルドアン大統領は、イスラム教指導者のギュレン師が事件に関与しているとして、アメリカ政府に同師の送還を求めているが、同師はクーデターへの関与を否定している。ギュレン師を支持するギュレン派は、イスラム教スンニ派を基盤とし、組織の実態は不明だが、軍や警察、教育機関などに勢力を広げているとされ、エルドアン大統領と対立関係にある。20日にはエルドアン大統領が3カ月の非常事態宣言を発令。600以上の学校が閉鎖され、教育省の職員約1万5000人をはじめ、警察官や裁判官など、5万人以上の政府職員が解職や停職などの処分を受けた。また、ギュレン派との関連が疑われるテレビとラジオ計24局が停止。大統領の権限拡大、反対派の一掃を進めており、国内外から強権化に対する懸念が深まっている。