2015年5月22日にアイルランドで実施された、同性間での結婚を認める憲法改正案について賛否を問う国民投票。統一アイルランド党と労働党の連立政権が13年に実施を決定した。同国は国民の8割以上がカトリックの信者で保守的な国柄と言われ、長年、カトリック教会が政治、社会に大きな影響力を持ってきた。そのため、1993年までは同性愛行為が犯罪とされていたほか、96年までは離婚も認められていなかった。その後、同性愛者の権利を認める世界的な流れを受けて、2010年に同性のカップルに異性の夫婦とほぼ同じ社会保障や税制を認めるシビル・パートナーシップ法が制定されたが、養子縁組などの面で異性婚に比べて制約があった。15年の国民投票は、憲法に「結婚は当事者の性別を問わない」という文言を加えるか否かを問うもので、有権者は18歳以上の約322万人。主要政党が賛成を呼びかけた一方、カトリック教会や保守的な市民グループなどは伝統的な家族観を守るべきだとして反対運動を展開した。開票の結果、賛成が62.1%、反対が37.9%となり憲法改正派が勝利(投票率は60.5%)。15年秋ごろには法整備がなされ、以後は異性の夫婦とまったく同等に扱われることになった。同性婚は世界の約20カ国で法的に認められているが、議会や司法ではなく国民投票で承認され、憲法に明記されるのは初めて。賛成が多数となった背景には、近年、聖職者による児童への性的虐待問題などでアイルランド社会における教会の信用が低下していた点が指摘されている。