フランスで、公の秩序に対する重大な脅威があると判断されたときに大統領が発することができる宣言。非常事態下では政府が人や車両の通行制限、集会やデモの禁止、不特定多数が集まる施設の閉鎖などを実施できる。また、警察権限が大きく強化され、治安当局は裁判所の令状がなくても昼夜を問わない家宅捜索や武器の押収などが可能になる。宣言が継続する期間は原則12日で、延長する場合には議会の承認を得て延長法を制定する必要がある。緊急事態に際して、国家が平時とは異なる非常措置を採ることができるとする国家緊急権による制度の一つで、アルジェリア独立戦争に対応するため1955年に制定された緊急状態法に基づく。62年まで続いた同戦争中に3回宣言され、85年に仏領ニューカレドニアで発生した暴動や、2005年にパリ郊外で移民の若者が起こした暴動の際も発令された。15年11月13日のパリ同時多発テロでは、発生直後にフランソワ・オランド大統領がフランス全土に国家非常事態を宣言。同月20日には、非常事態を3カ月延長する法案が議会で可決され、16年2月25日まで継続することになった。