主に中欧から東欧に居住する、インド北部を起源とされる民族。髪や目は黒く、肌の色は浅黒い人が多いが、必ずしもその限りではない。9世紀ごろにインドから移動し、12世紀ごろにヨーロッパに到達したとされる。欧州評議会によると、ヨーロッパ全体で1000万人以上が各地に居住していると推定される。かつては、ギリシャ語で異教徒を意味する「ツィゴイナー」や、外見的な特徴によってエジプトから来たと考えられたことに由来する「ジプシー」(“Egyptian”のなまり)などの呼称が差別的に使われていたが、1971年に世界ロマ会議が提唱したロマ(単数形はロム)の公称が用いられるようになった。民族全体を指してロマニと称することもある。歴史的に放浪の生活が長く続いた民族であることから、異分子とみなされて差別や迫害の対象となることが多く、集団でキャンプ地(居住地)をつくって生活していることが多い。第二次世界大戦下ではナチス・ドイツによって、ユダヤ人だけではなく、50万人以上のロマも虐殺されたとされる。2010年には、フランス政府が不法滞在のロマのキャンプ地を撤去、国外へ強制送還し、欧州連合(EU)から人種差別だとの批判を浴びた。13年10月、ギリシャのロマの集落で、青い目でブロンドの髪の少女が発見され、両親を名乗るロマの夫妻が誘拐罪などで起訴される事件が起こった。後にDNA鑑定によって、少女は夫妻の証言どおり、ブルガリアに住むロマの実の親から里子に出されたことが判明したが、欧米を中心に国際的な親探しが始まるなど、日本でも事件が大きく報じられ、注目が集まった。