外国の船舶が、沿岸国の平和や秩序、安全を乱さないかぎり、その国の領海内を自由に通航できる権利。1982年4月に採択された「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)では、海岸から12カイリ(約22キロメートル)までを領海とし、領土と同様に沿岸国が国家主権を行使できると定めている。ただし、国際交通の利益を考慮して、武力行使や威嚇、軍事演習、防衛に関わる情報取集、漁獲など、沿岸国の平和などを乱す行為を伴わない通航を妨げてはならないとしている。また、領海の通航のみを理由として課徴金を課すことも禁じられている。ここでいう通航とは、継続的で迅速な通過や、河口や港湾などの内水への出入りであり、不必要な停船や投錨(びょう)はしてはならない。また、潜水艦の場合は海面に浮上して航行しなければならない。なお、国連海洋法条約においては、満潮時に水没する暗礁が、領海の幅を超えた距離にある場合、それ自体の領海を認めていない。2015年10月26日、アメリカ海軍は南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で中国が埋め立てた人工島付近に駆逐艦を派遣した。この動きは「航行の自由作戦(FONOP)」と名付けられた計画の一環で、中国側が一方的に領海と主張する海域で艦船を通航させ、航行の自由があることを行動で姿勢を示すもの。中国側は領海侵犯として反発したが、仮に領海内であっても国際的には無害通航とみなされる可能性が高い。