2015年11月24日、トルコとシリアの国境付近上空で、ロシア軍の爆撃機がトルコ領空を侵犯したとしてトルコ軍機に撃墜された事件。ロシアの戦闘爆撃機スホイ(Su)24が高度約6000メートルを飛行中に、トルコ空軍のF-16戦闘機が発射した空対空ミサイルを被弾し、シリア北西部のラタキア近郊に墜落した。搭乗していたロシア兵2人はパラシュートで緊急脱出したが、1人は降下中にシリアの反体制派武装勢力に銃撃されて死亡。また、脱出した兵士の救出に向かったロシア軍のヘリコプターも武装勢力の攻撃を受け、乗員1人が死亡した。Su24のもう1人の乗員は撃墜翌日の25日に生存が確認された。この事態を巡り、ロシアはシリア領内の過激派組織「イスラム国」(IS)に対する空爆任務中であり、トルコ領空には侵入していなかったと主張。トルコによる裏切り行為だとして強く非難した。一方、トルコ側は撃墜された機を含む国籍不明機2機が、警告を無視して17秒間にわたり領空侵犯したとし、撃墜は安全保障上正当な行為だったと反論した。ロシア軍は15年9月にシリアでのイスラム国空爆に参加したが、同年10月に2回トルコ領空を侵犯し、トルコが抗議していた。また、シリア情勢に関しては、アサド政権存続の是非を巡って両国の立場は異なり、反アサド派のトルコ系少数民族トルクメン人の居住地域をロシア軍がたびたび爆撃していたことで、トルコではロシアへの反発も広がっていた。トルコのエルドアン大統領が謝罪しない方針を示し、ロシアのプーチン大統領がトルコに対する経済制裁の大統領令に署名するなど、撃墜による両国の対立は続き、緊張が高まっている。