他国への非合法な渡航をあっせんし、利益を得る行為。貧困や紛争、迫害などの理由から他国への移住を希望するものの、何らかの理由から合法的な移住が困難な者に対し、密航業者が船舶などの輸送手段や身分証明書の偽造などを金銭と引き換えに提供する。渡航希望者の多くはほかに手段がないため、密航業者に対して弱い立場に陥りやすく、高額な対価の要求や、密航中の虐待、強奪などを受けることが少なくない。密航のあっせん、手引きは多くの場合、犯罪組織の主導によって行われ、大きな利益を上げているといわれる。日本では1990年代に中国からの集団密航が問題になり、蛇頭(スネークヘッド)と呼ばれるあっせん組織の存在が注目された。近年、国際的に問題となっているのは中東やアフリカから地中海を越えてヨーロッパに渡る密航者の増加。特に2011年、リビアのカダフィ政権崩壊後、混乱が続く同国からイタリアなどを目指す密航が後を絶たず、リビア国内では武装組織などによる密航ビジネスが横行している。密航者を乗せた船が地中海で沈没する事件、事故も多発しており、15年4月にはリビア沖で密航船が転覆して約800人が死亡する事故が発生した。