欧州連合(EU)の基本となる欧州連合条約は、1993年11月の発効時には、締結の場となったオランダの地名をとってマーストリヒト条約と呼ばれたが、その後、数度にわたって修正され、アムステルダム条約(99年発効)、ニース条約(2003年発効)などと、修正のたびに通称も変更されてきた。リスボン条約は、正式名称を「欧州連合条約および欧州共同体設立条約を修正する条約」といい、加盟国が27カ国に増えたことに伴って07年12月に調印され、09年12月に発効した修正条約を指す。このうち、50条はリスボン条約で初めて盛り込まれた条項で、加盟国のEU脱退について定めている。規定ではまず、全ての加盟国は自国の憲法上の要件に従い、EUからの脱退を決定できるとされている。脱退を決定した加盟国がその意思を欧州理事会に通告することで脱退に向けた手続きが開始され、両者の将来の関係の枠組みを決める協定についての交渉に入る。この協定が発効した日から、EUの条約は脱退国に適用されなくなる。協定が締結できなかった場合には、理事会が期間の延長を認めないかぎり、脱退の通告から2年後にEU条約の適用が停止される。ただし、全ての加盟国が同意すればこの期間を延長することができる。16年6月にイギリスで実施された国民投票で、同国のEU離脱(ブレグジット、Brexit。イギリス「Britain」と離脱「exit」を組み合わせた造語)が決定したため、この50条が実際にはどのように適用されるか、注目が集まっている。