16年1月6日に4度目の核実験を行い、同年2月7日には国連安全保障理事会(安保理)決議に違反する、事実上の長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対し、同年3月2日に国連安保理が全会一致で採択した制裁決議(第2270号)。北朝鮮に対する国連安保理の制裁決議は、06年に最初の決議が行われて以降、5度目となる。核実験の後、安保理ではアメリカと中国による水面下の交渉が続けられてきたが、中国が北朝鮮国民の生活への影響から慎重な姿勢を示したため、合意内容がまとまらず交渉が難航した。16年2月24日に米中が合意し、翌25日、アメリカのパワー国連大使が安保理に提出。アメリカ主導で作成した制裁決議案を、日本を含む53カ国が共同提案する形となった。決議採択は同年3月1日を予定していたが、最終段階になってロシアが修正を求めたため延期。ロシアの要望を受け入れる形で制裁内容を一部修正し、翌2日に採択に至った。今回の決議の主な内容は、(1)ロケット燃料を含む北朝鮮への航空燃料の輸出を原則禁止、(2)北朝鮮からの石炭、鉱物資源の輸入を原則禁止、(3)北朝鮮に出入りする貨物の検査を強化し、対象を疑わしい貨物からすべての貨物へと拡大、(4)安保理決議違反が疑われる全船舶の寄港禁止、(5)金融制裁を強化し、加盟国の金融機関が北朝鮮に新規の支店、口座を開設することなどを禁止、(6)不正に関与する北朝鮮外交官の国外追放の義務化、など。また、従来の制裁内容も強化し、武器の輸出入を完全に停止したほか、北朝鮮の軍事力向上につながるあらゆる物資の移転も禁止した。これまでにない厳しい内容の制裁となったが、過去4度の制裁が必ずしも効果を上げてこなかったことから、加盟国が制裁を着実に履行するかどうか注目されている。