一人っ子政策は、人口抑制のため夫婦1組が産むことができる子どもを原則1人と定めた中国の政策。2015年10月に開かれた中国共産党の中央委員会第5回全体会議(5中全会)で廃止が決定された。中国では毛沢東時代に多産が奨励されて人口が急増したため、1979年に一人っ子政策を国策として開始。各夫婦の子どもは原則1人に制限されて、遵守すると宣言した夫婦には奨励金給付などの優遇措置が取られ、違反者には多額の罰金などが科せられた。中国政府はこの政策によって4億人分の人口増加を抑えることができたとしている。一方で、罰則を逃れるために戸籍に登録されない子ども(黒孩子)が増加したことや、農村部などで男児を求める風潮から若い世代の男女比率がアンバランスになったこと(20歳未満の男女比率が100:87)など、深刻な社会問題の原因にもなった。違反者に対する罰金や強制的な人工中絶などは人権侵害として国際的な批判を浴びた。そのため、84年に農村部で第1子が女児の夫婦に第2子の出産が認められ、少数民族の夫婦には第2子以降の出産が認められるなど、部分的、例外的な規制緩和の動きも進んできた。2013年には都市部でも夫婦のどちらかが一人っ子なら第2子が持てるようになった。ただし、長年の規制は世界でも例を見ないほどの急速な少子高齢化を招き、12年には就業年齢人口(15~59歳)が初めて減少に転じ、その後も3年間連続で減少し続けるなど、経済成長への悪影響や社会不安増大の懸念が高まっていた。15年の廃止で全ての夫婦が2人の子どもを産めるようになり、中国政府の予測では新生児数が増加に転じて30年には人口が14億5000万人に達するとしている。しかし、教育費の高騰など出産、育児に関わる課題は多く、当局の予想通りに人口増加が進むかどうか、疑問視する声もある。