中国で、社会の治安や国家の安全を守ることを目的として制定された二つの法律。反スパイ法は、従来の国家安全法に代わってスパイ行為を防ぐ法律で、2014年11月に施行された。同法ではスパイ行為を、国内外の機関や個人が国家の安全を害することと定義している。国家機密を盗み取ることなどの項目を列挙しているが、その中には「その他のスパイ活動」というあいまいな表現も含まれており、当局の裁量で海外と関係のある組織や人物を幅広く取り締まることができる。最高刑は死刑。15年には同法を適用した外国人の拘束が相次ぎ、日本国籍の民間人が身柄を拘束、逮捕される事態も発生している。一方の反テロ法(反テロリズム法)はテロ対策の強化のために15年12月に成立し、16年1月1日に施行された。反スパイ法と同様に、人への攻撃や公共施設の破壊などとともに、「その他のテロ行為」も対象とするとしており、当局の裁量の余地を残している。具体的な対策としては、テロに関わる情報を一括して収集する新たな組織「国家反テロ情報センター」を設置。通信事業者やインターネットのプロバイダーなどに対し、テロの予防と調査への協力として、通信の暗号技術の提供などが義務付けられた。また、テロの模倣を防ぐためとして、当局の承認を得ない報道も規制される。中国ではこの2法以外にも、15年7月に国家の安全に関して包括的に定める新国家安全法が制定されたほか、海外の非政府組織(NGO)を規制する法律の審議が進むなど、社会統制の動きが強まっている。