中国の香港特別行政区の首長を選ぶ選挙。1997年にイギリスから中国に返還された香港には、一国二制度のもと、外交と防衛を除く高度な自治権が与えられており、資本主義や独自の通貨、言論の自由、司法の独立などが認められている。そのトップである行政長官は、業界団体などから選ばれた選挙委員のみの投票で選ばれ、任期は5年。香港返還と同時に施行された香港基本法では、2007年の行政長官選挙から普通選挙に移るとされていたが、中国政府はこれを認めず、07年、12年には普通選挙は実施されなかった。17年に実施予定の行政長官選挙については、当初、中国政府が普通選挙の導入を示唆。しかし、14年8月に中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が発表した決定では、18歳以上の有権者が1人1票の投票権を持つとされたものの、新設される指名委員会の半数以上の支持を得た2~3人しか立候補の資格を得られないとされた。同委員会は議員や業界団体関係者など、親中派が大多数を占めると見られ、民主派の立候補は事実上不可能になる。この決定に反発した一部の市民や学生らは、同年9月中旬から授業のボイコットや、香港中心街の占拠などで抗議デモを展開。デモの参加者には、警察の催涙弾をよけるために傘を持つ者が多かったことから、この活動は一部のメディアで傘の革命、雨傘革命などと呼ばれるようになり、国際的な注目を集めた。