ミャンマー西部のラカイン州北部などに多く住むイスラム教徒の人々。ロヒンジャとも呼ばれる。隣国のバングラデシュなどにも住む。推定人口は80万~130万人。その多くは、イギリスの植民地だった19世紀に現在のバングラデシュから移住した人々がルーツと考えられ、1948年のミャンマー独立後にロヒンギャを自称するようになった。ミャンマー政府はロヒンギャ族を少数民族とは認めておらず、バングラデシュからの不法移民とみなしている。そのため、同国で82年に制定された国籍法では市民権が否定され、国籍も与えられていない。仏教徒が多数派の同国では少数派のイスラム教徒であることもあり、たびたび差別、迫害の対象となって、多くの人々が難民として国外に逃れる事態が発生してきた。2012年にはラカイン州で仏教系住民との大規模な衝突が起こり、ロヒンギャ族を中心に約200人が死亡。その後、ミャンマー政府は多数のロヒンギャ族を難民キャンプに隔離するなどし、15年3月には暫定的な在留資格を認める身分証の発行も停止した。12年以降で16万人以上のロヒンギャ族が国外に脱出したといわれるが、密航あっせん業者による人身売買の被害にあうケースも後を絶たない。15年5月ごろからは、隣国のタイで密航ルートの取り締まりが強化されたことなどをきっかけに、ロヒンギャ族を乗せた船が周辺国に漂着したり、海上で立ち往生したりする事態が続出。ミャンマーがロヒンギャ族を自国民と認めていないうえ、周辺国は難民条約に加盟しておらず、ロヒンギャ族を難民として保護する国際法上の義務が発生しない。そのため、ロヒンギャ族の大量流入を警戒した周辺国は、ロヒンギャ難民を追い返すこともあり、国際的な問題となっている。