インド、バングラデシュ両国に存在する飛び地の交換による国境の画定。両国には、17世紀頃にクチビハール藩王国とムガール帝国の領土争いがきっかけとなって形成された飛び地がある。飛び地の住民は事実上無国籍の状態で、国境をまたぐ移動を制限されていた。さらに、飛び地にはどちらの国からもインフラや公共サービスが提供されずに発展が遅れていたうえ、麻薬取引などの犯罪の温床になっているとの指摘もある。そのため、飛び地を解消し、国境を画定することは両国間の長年の懸案であった。国境画定をめぐっては、1974年に領土の交換を行うことで両国が合意。しかし、交渉は進展せず、飛び地問題は未解決のままとなっていた。2011年には、インドのマンモハン・シン首相(当時)とバングラデシュのシェイク・ハシナ首相が、国境画定に向けた議定書に調印。ただし、飛び地の交換には両国の議会での承認が必要で、インド議会では野党の反対で承認が得られず、このときも正式合意には至らなかった。15年5月、隣国との関係改善を最優先課題に掲げるインドのナレンドラ・モディ首相が議会を説得して、領土交換を認める憲法修正案を可決。同年6月6日に国境を画定させることでモディ首相とハシナ首相が正式に合意し、バングラデシュ領内のインドの飛び地111カ所(総面積約6900ヘクタール)と、インド領内のバングラデシュの飛び地51カ所(総面積約2800ヘクタール)が交換されることとなった。飛び地に暮らす約5万人の住民は、現在の場所に残って国籍を変えるか、居住地を自国領に移すかを選ぶことができる。