欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)など、ギリシャに対する国際債権団が、財政危機に陥っている同国への金融支援条件とした財政緊縮策を受け入れるかどうかを問う国民投票。2015年6月25日に、ユーロ圏財務相会合でEU、ECB、IMFが、ギリシャへの金融支援の条件として財政緊縮策を提示した。具体的には、歳出削減策として、公務員の早期退職制度の見直しや年金の支給開始年齢の段階的引き上げなど、歳入の増加策として、付加価値税の税率の引き上げ、脱税や所得隠しを処罰するための新たな法律の導入などを挙げた。これに対して、ギリシャ議会は同月28日に、財政緊縮案の受け入れの是非を問う国民投票の実施を承認。投票を前に、チプラス首相は債権者との交渉を有利に進める材料になるとして、国民に反対票を投じるように呼びかけたのに対し、野党はユーロ圏からの離脱を恐れる国民感情に訴えて賛成を呼びかけた。7月5日、18歳以上のギリシャ国民約990万人のうち、国内在住約800万人の有権者を対象に国民投票が実施された結果、投票率は62.5%、反対61.31%、賛成38.69%と反対票が賛成票を大きく上回った。しかし、同国政府が新たな金融支援を受ける前提として、同月9日に債権団に提出した120億ユーロ(約1兆6000億円)規模の財政再建案は、EUなどが当初提示していた財政緊縮策をおおむね踏襲する内容となった。チプラス首相はこの方針転換について、ユーロ圏からの離脱を避けるための決断で、緊縮と引き換えに、債務の減免などを求めると表明しているが、国民からは不満の声も上がっている。再建案は15年7月11日に同国議会で承認され、翌12日に開催されたユーロ圏財務相会合および首脳会議では、協議の末、ギリシャが財政再建案の一部を法制化することを条件に、新たな金融支援の交渉を再開することで合意した。ギリシャは16日に増税や年金改革などの関連法案、23日には銀行の破たん処理などの関連法案を議会で可決し、これらを受けてEUは、3年間で最大860億ユーロ(約11兆6000億円)にのぼる支援の協議を本格的に再開する見通し。