中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統が2015年11月7日にシンガポールで行った首脳会談。1949年の中台分断後、初めての首脳会談となった。中国では第2次世界大戦終結後、蒋介石率いる国民党と毛沢東率いる共産党による内戦が再開され、敗れた国民党が49年に台湾に逃れてからは両者が中国の正統政権と主張して断絶状態が続いた。90年代前半は緊張緩和の動きも見られ、92年には両者の交流窓口機関で「一つの中国」の原則を確認した92年合意(92年コンセンサス)が交わされたとされる。2000年に台湾で独立志向の強い民進党が政権についたことなどで関係は再び冷え込んだが、08年に発足した国民党の馬英九政権は対中融和路線を取り、経済分野を中心に関係改善を進めてきた。首脳会談では、92年合意の堅持を両者があらためて確認。習主席は台湾における独立勢力の動きに反対すると述べるとともに、中国が進める一帯一路構想に台湾が積極的に参加することなどを歓迎するとした。しかし両者間の関係に実質的な進展はなく、協定の締結や共同声明の発表などは行われなかった。この首脳会談は、民進党の蔡英文主席の優勢が伝えられる16年1月の台湾総統選挙を前に、中台関係の安定化をアピールして国民党の支持回復につなげたい馬総統と、台湾が対中強硬路線に転じるのをけん制したい習主席との双方の思惑が一致したことで実現したと見られている。