1981年に発効した女性差別撤廃条約(189締約国、日本は85年に締結)の実施状況を審査する機関である国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が2016年3月7日に公表した、日本政府に対する勧告を含む最終見解。最高裁判断が15年12月に合憲と判断した「夫婦同姓」については、女性に夫の姓を強制していると指摘し、改正を求めた。女性にのみ6カ月の「再婚禁止期間」を定めている民法の規定については、最高裁が15年12月に禁止期間が100日を超える部分は違憲であると初めての判断を示したが、同勧告は「女性にだけ一定期間の再婚を禁じている」としてさらなる改善を求めた。そのほか、妊娠、出産に関わるマタニティハラスメントを含む雇用差別や職場でのセクシャルハラスメントを禁止、防止する法的措置を整えること、国会議員や企業の管理職など、指導的な地位を占める女性を20年までに30%以上にすることなども求めた。従軍慰安婦問題については、日本政府の取り組みがいまだ不十分であると指摘。15年末の日韓合意は被害者中心のアプローチになっていないとして、実行の際には元慰安婦の意見に十分配慮するよう日本政府に勧告した。これに対し、日本政府は16年3月8日、「日本政府の説明を十分に踏まえていない」と遺憾の意を表明した。最終見解は、厳しい注文を付ける一方、15年に成立した女性活躍推進法、待遇改善に向けた14年のパートタイム労働法改正など、09年勧告以降の法的な枠組みの整備に関しては肯定的に評価した。