2015年6月1日夜に中国中部の湖北省荊州市を流れる長江(揚子江)で大型客船が転覆した事故。転覆したのは、重慶市の国営企業である重慶東方輪船公司が保有する観光クルーズ船「東方之星」。1994年に建造された長さ76.5メートル、幅11メートル、重量2200トンの船で、乗員乗客454人を乗せて、江蘇省南京市から重慶市に向けて航行していた。長江流域の景観や史跡をクルーズしながら楽しむ三峡巡りは同国でも屈指の人気観光コースで、海外での知名度も高い。事故により、船はさかさまになって船底をわずかに水面に出した状態で水没し、乗客の大半が船内に閉じ込められた。翌日朝から武装警察や消防ら数千人が動員されて救助活動が行われたが、乗客らの捜索、救出は難航。中国当局は同月13日に、犠牲者全員の身元が確認されたとして捜索を終了。発表された生存者は12人、死者は442人で、1949年の中華人民共和国建国以降で最大規模の船舶事故となった。事故原因については、当時、現場周辺で続いていた悪天候の影響とする見方が報じられているが、荒天の中で航行を続けた船長の判断の妥当性や、改造により船体のバランスが崩れていた可能性についても指摘されている。