安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が2014年11月10日に行った首脳会談。同日に北京で開幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて開かれ、約25分間の話し合いがもたれた。日本の首相と中国の国家主席の正式な会談は11年12月以降途絶えており、12年12月に発足した第2次安倍政権では初の会談実現となった。14年11月7日に両政府は会談の前提となる「日中関係の改善に向けた話し合いについて」という文書を合意発表。同文書では、(1)日中の戦略的互恵関係を発展させる、(2)歴史を直視し、日中関係に影響する政治的な困難を克服すること、(3)尖閣諸島など、東シナ海海域で近年生じている緊張状態について異なる見解を持っていることを認識し、対話と協議を通じて危機管理メカニズムを築き、不測の事態を避ける、(4)政治、外交、安保対話を徐々に再開し、政治的な相互信頼関係の構築につとめる、という4項目について意見の一致を見たとしていた。会談に先立つ合意文書の発表は異例。また、文書の英訳は、両国が各自に作成したものが発表された。首脳会談ではこの四つの合意事項を踏まえたうえで、会談が両国関係改善の第一歩であることを互いに確認。両国が戦略的互恵関係に基づいて関係を発展させることや、東シナ海での偶発的な衝突を避けるための海上連絡メカニズムの運用開始に向けた協議を加速させることなどについて合意がなされた。また、歴史認識については、習主席が「13億人の国民の感情の問題」と指摘したうえで、村山談話に言及したのに対し、安倍首相は歴代内閣の歴史認識の立場を引き継いでいると説明した。その一方で、尖閣問題や靖国神社参拝問題などについては会談では具体的に言及されることはなかった。