中米パナマにある会社設立を代行する法律事務所モサック・フォンセカから流出した膨大な顧客データ。ドイツの有力紙「南ドイツ新聞」の記者が2015年に匿名の人物から情報提供の連絡を受け、数カ月のやり取りの後、2.6テラバイト、1150万件に及ぶデータを入手。内容は同事務所が設立を手伝ったペーパーカンパニーの登記簿や契約書類、電子メール、パスポートの写しなどのほか、音声ファイルなど。その後、世界各国の報道機関などが加盟する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ 本部・ワシントン)において約400人のジャーナリストが分析を実施。16年4月3日、ICIJが分析結果を公表し、世界各国の首脳およびその親族らが、租税回避地(タックスヘイブン)を活用して隠れた資産運用を行っていた実態が明るみになった。名前が挙がっていたのは、アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領、ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領、アイスランドのシグムンドゥル・グンロイグソン首相、サウジアラビアのサルマン国王ら。また、ロシアのプーチン大統領の親友であるチェロ奏者、中国の習近平国家主席の親族らがタックスヘイブンの企業にかかわっていたこともわかった。アメリカ、フランス、ドイツ、オーストラリア、スウェーデン、オランダなどの国々が流出データの調査を開始するとしている。その一方、中国ではこの問題が根拠に欠けるものとして取り合わず、報道規制を行っている。日本では菅義偉官房長官が「日本企業への影響も含め軽はずみなコメントは控えたい」と、文書について調査する考えはないことを表明した。同月13日には経済協力開発機構(OECD)が各国の税務当局による緊急会合を開き、14日からの20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)でも、タックスヘイブンを利用した富裕層の課税逃れに対する監視強化を協議するなど、各国が連携した租税回避の対策が急がれている。