フィリピンで2016年5月9日に投開票が行われた大統領選挙。10年に発足したアキノ政権の任期満了を受けて実施された。フィリピンの大統領は憲法の規定で再選が禁じられているため、アキノ大統領は立候補できなかった。選挙戦では当初、アキノ大統領が後継指名したマヌエル・ロハス前内務自治大臣、野党出身のジェジョマル・ビナイ副大統領、人気映画俳優の養女で無所属のグレース・ポー上院議員の有力候補3人による争いと見られていた。しかしその後、ミンダナオ島のダバオ市長を1988年から通算20年以上務めたロドリゴ・ドゥテルテ候補が、ダバオの治安を改善させた実績と、アメリカ大統領選挙を戦うドナルド・トランプ候補になぞらえて「フィリピンのトランプ」とも評される過激な発言で支持を拡大。最終的には1660万票を集めて2位のロハス候補に大差をつけ、当選した。副大統領にはレニー・ロブレド下院議員が当選した。大統領、副大統領は同年6月30日に議会の宣言を受けて正式に就任する。ドゥテルテ新大統領には、アキノ政権下で拡大した格差の解消や治安の改善などが期待されている一方で、海洋進出の動きを強める中国との領有権問題など外交分野では、その方針や手腕を不安視する声もある。