2014年7月17日、ウクライナ東部のドネツク上空約1万メートルを飛行していたマレーシア航空機が何者かに撃墜された事件。墜落したのはオランダのアムステルダム発、マレーシアのクアラルンプール行きのマレーシア航空17便で、乗員乗客合わせて298人全員が死亡した。犠牲者はオランダ国籍保有者が196人と最も多く、マレーシア人、オーストラリア人、イギリス人なども命を落とした。墜落当時、ウクライナ東部では同国からの分離独立を主張する親ロシア派武装勢力とウクライナ政府軍が激しい戦闘を繰り広げており、ウクライナ政府や欧米諸国は親ロシア派による撃墜として非難。武装勢力側を支援していると見られるロシアにも責任があるとして、欧州連合(EU)はロシアに対する経済制裁を発動した。一方、武装勢力やロシアはウクライナ政府軍に責任があると反論した。墜落現場が紛争地域であったため現地調査や遺体回収などは難航したが、その後、オランダを中心とする調査が行われ、15年10月13日、オランダ安全委員会は、ウクライナ東部から発射されたロシア製地対空ミサイル「BUK(ブーク)」が墜落の原因とする最終報告書を発表。発射の実行犯は特定しなかったものの、親ロシア派の支配地域から発射された可能性を示唆した。また、同委員会は予防措置としてウクライナ政府が該当空域を閉鎖すべきだったとも指摘した。