イベリア半島の南端に位置するイギリスの自治領。スペイン継承戦争中の1704年にイギリスが占領を開始し、1713年にユトレヒト条約によってスペインがイギリスに譲り渡したが、地中海と大西洋を結ぶ戦略的要衝であることから、300年にわたって返還を求め続けてきた。スペインは1969年から国境を封鎖する措置を取るなど返還への圧力をかけてきたが、2002年にジブラルタルの住民投票によってイギリスとスペインが共同統治する構想が9割以上の反対で否決されると、問題はいったん棚上げに。しかし、11年にスペイン中道右派の国民党が政権をとるとジブラルタル奪還を訴えて強硬姿勢を見せたため、再び領有権をめぐる緊張が高まった。12年にはスペインのソフィア王妃が、イギリス王族のジブラルタル訪問に抗議してエリザベス女王の即位60年記念式典への出席を急きょ中止。13年7月にジブラルタル自治政府が人工漁礁を建設し始めると、スペインは自国の漁船を妨害するものとして国境検問を強化した。8月に入ると、スペインは国境を通過する際の通行料徴収なども示唆したため、イギリスはこれに抗議して法的措置を取る構えを示し、欧州連合(EU)諸条約の解釈と適用について取り扱う司法の最高機関欧州司法裁判所で、両国が争う事態に発展する可能性が出ている。