イランの核開発をめぐり、同国と欧米など6カ国の間で行われた協議。2002年8月にイランの核開発問題が発覚して以降、核技術の軍事利用を懸念する諸外国はイランと断続的に協議を重ねてきたが目立った外交的成果は残せず、国連安全保障理事会は4度にわたってイランに対する制裁決議を出した。また、アメリカや欧州連合(EU)は国連決議とは別に経済制裁などを実施してきた。しかし、13年8月にイランで穏健派のロハニ政権が誕生すると、同国の姿勢は軟化。同年11月にはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国の6カ国との間で、ウラン濃縮などの核開発活動の一部を止める代わりに期限付きで制裁をゆるめる「第一段階の合意」を結んだ。その後も6カ国とイランの間では最終合意に向けた協議が続けられ、15年4月に最終的な枠組みについて合意。同年6月末から、オーストリアのウィーンで細部を詰める協議が進められ、7月14日に問題解決のための「包括的共同行動計画」(Joint Comprehensive Plan of Action ; JCPOA)で最終合意に達したと発表した。同計画では、イランは高濃縮ウランやプルトニウムを15年間は製造、取得しないとし、ウラン濃縮に使う遠心分離機の数を3分の1に、約10トン保持している低濃縮ウランを300キログラムに減らすとした。また、国際原子力機関(IAEA)による核関連施設への査察も受け入れる。一方で、イランが合意内容を履行していることを確認すれば、アメリカとEUは経済制裁を解除する。ただし、合意違反があれば再び制裁を科す。国連決議に基づく武器禁輸措置は最大5年間、ミサイル開発制限は最大8年間継続する。合意については、核拡散防止や中東の安定化に向けて期待される一方、一定の開発能力は残るため、イスラエルやサウジアラビアなどは実効性に懐疑的な視線を向けている。