イギリスのイラク戦争参戦の経緯などを検証する独立調査委員会が、2016年7月6日に公表した最終報告書。同委員会の委員長を務めるジョン・チルコットの名から、こう呼ばれる。09年7月にブラウン首相(当時)が同委員会を設置し、参戦を決めた当時のトニー・ブレア首相のほか軍関係者など150人以上の証言、15万件以上の政府文書をもとに検証を重ね、260万語にも及ぶ報告書をまとめた。同報告書は、イギリスの参戦はイラクのフセイン政権の武装解除に向けた平和的な方策を尽くす前のものであり、軍事行動は当時最後の手段ではなかったとブレア元首相を批判。参戦の根拠とされたイラクの大量破壊兵器の開発・保有に対する脅威については、正当化できないとの判断を示した。また、イギリスが国連安全保障理事会の決議なしに軍事行動を起こしたことは安保理の権威を傷つけるものであり、法的根拠があると決断できる状況には程遠かったと結論付けた。さらに、ブレア元首相が02年7月、アメリカのブッシュ前大統領に宛てた書簡の中で、「何があっても行動を共にする」と述べていたことも明らかになった。ブレア元首相は同報告書の公表を受け、大量破壊兵器の情報の誤りを謝罪し、犠牲者に対する遺憾の意を表明したが、参戦の決断自体は正しかったと述べた。