鉱山の排水に含まれたカドミウムの慢性中毒による公害病。水俣病、新潟水俣病、四日市ぜんそくと並ぶ四大公害病の一つ。汚染されたコメや飲み水を介して腎臓にカドミウムが蓄積することで腎臓障害(カドミウム腎症)が起きる。やがてカルシウムやリンが尿中に流出して欠乏し、骨粗しょう症を伴う骨軟化症を発症する。極度に骨がもろくなって肋骨や大腿骨、手足など全身で骨折が起こり、くしゃみなど些細なことで骨が折れるたびに患者が「痛い痛い」と訴えたことが病名の由来。富山県の神通川流域で大正時代から発生し、1955年の報道で広く知られるようになった。68年に原因が三井鉱業(現・三井金属鉱業、本社・東京都品川区)の神岡鉱業所(現・神岡鉱業、岐阜県飛騨市)から神通川に排出されたカドミウムであることが特定され、日本の公害病第1号に認定された。国の認定患者は196人(うち生存者3人)。同年、カドミウムと病気発症の因果関係を認めなかった同社を相手に流域被害者が損害賠償請求訴訟を起こし、72年に原告被害者の勝訴が確定した。しかし、国の基準で公害病患者として認定されなかったカドミウム腎症の患者は対象外となったため、その後も被害者らでつくる「神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会」(被団協)と同社の間で交渉が継続。2013年12月17日に、同社がカドミウム腎症の患者に賠償金ではなく、一時金として一人当たり60万円を支払うことでようやく双方が合意し、全面解決となった。