富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業(本社・東京都新宿区)が開発した抗インフルエンザウイルス薬。一般名はファビピラビル。同社による抗ウイルス剤研究の中で1998年に発見され、その後、富山大学医学部の白木公康教授との共同研究で有効性を確認。2014年3月に、厚生労働省からインフルエンザ治療薬として製造販売の承認を受けた。細胞内でウイルスのRNA複製を阻害しその増殖を防ぐという、従来の抗インフルエンザ薬とは異なる作用のメカニズムを持つため、既存の薬剤に対する耐性があるウイルスにも効果が期待される。ただし、動物実験で胎児に奇形を生じさせるリスクが確認されていることから、他の抗インフルエンザ薬が無効だったり効果が不十分であったりする新型または再興型のインフルエンザ感染症が発生し、その対策にアビガンが必要であると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される。また、妊婦や妊娠している可能性がある女性への投与は禁忌とされ、男女ともに投与後7日間に性交渉を行う場合は避妊を徹底する必要がある。14年8月にアメリカの国防総省がエボラ出血熱治療薬の候補の一つに挙げたことから、世界的に注目されるようになった。同年9月、エボラ治療薬としては未承認のまま、他の治療薬との併用でフランス人患者に初めて投与され、同年10月までに4人に使われている。さらに、同月21日には、ギニアでエボラ患者に投与する臨床試験を同年11月中旬に実施するとフランス国立保健医療研究所が発表。60人の患者を対象に効用や人体への影響などを調べ、結果は15年1月に出る見通しとしている。