病気や外傷などによって生じた脳の損傷により引き起こされる認知機能や精神機能の障害。高次脳機能とは、記憶や思考の統合、感情の制御など、ヒト特有の高度な情報処理を行う脳の働きのことで、脳梗塞などの脳血管障害や脳腫瘍、脳外傷、低酸素脳症などで脳が傷つき、この能力が低下すると日常生活や社会生活にさまざまな支障をきたす。損傷を受けた部位によって症状は異なり、新しいことが覚えられなくなったり、昔のことを思い出せなくなったりする記憶障害や、集中を持続できず会話や思考がとぎれとぎれになる注意障害、計画性を持って行動できなくなる遂行機能障害、感情が不安定になって怒りっぽくなったり、無感情になったりする社会的行動障害、会話や読み書きができなくなる失語症、簡単な動作でも実行できなくなる失行症、見聞きしたものを認識できない失認症などが起こる。厚生労働省が定める基準では、こうした症状のうち、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害の四つが高次脳機能障害とされる。外見上は発症前と大きな変化がないため、障害に対する周囲の理解を得にくく、症状が軽度の場合には本人や家族も気づいていないことがある。