重度の心臓病の子どもが心臓移植を待つ間、心臓と外部のポンプをチューブでつないで血液を循環させ、心臓の働きを助ける医療機器。海外では1990年代から広く用いられ1000例以上の実績がある。海外では使用可能な医療機器が日本では未承認のために使用できないデバイスラグの象徴として問題視されていた。日本でも使用を求める声が医師や患者から上がっていたが、患者数が少なく市場規模が小さいため利潤が出ないとして企業が長い間導入に踏み切らなかった。2009年に厚生労働省が早期導入が必要な医療機器に選定し、11年に承認のため優先的審査を行う対象に指定。12年から、東京大学医学部附属病院、大阪大学医学部附属病院、国立循環器病研究センターで臨床試験(治験)が始まった。一方、15年1月に、大阪大学医学部附属病院で心臓移植を待っていた6歳未満の女児が、急激な容体の悪化や心臓移植の待機登録者のみに認められている治験の参加基準に満たないなどの理由から小児用補助人工心臓を使えずに脳死。女児の死亡を受け、同省は治験の基準を心臓移植の待機登録前でも医師の判断で装着できると緩和。同年4月、国立循環器病研究センターで、移植待機未登録の10カ月の女児に小児用補助人工心臓を埋め込む手術が行われた。こうした状況を受け、15年6月12日、同省の専門部会が、14年11月に神戸市の医療機器販売会社が申請していた、ドイツの医療機器メーカー、ベルリンハート社製の小児用補助人工心臓「EXCOR」を国内で製造、販売することを了承。同年6月18日に国内で初めて正式承認された。同社の補助人工心臓は患者の体に合わせ6種類のポンプがあり、体重約2キロからの子どもでも使用可能。通常、医療機器の承認には申請から約1年かかるが、小児用補助人工心臓は早期承認の必要性が高く、申請から約7カ月という異例の早さで承認された。15年夏にも保険適用される。