民法772条によって、妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定すると定めた規定。結婚成立の日から200日経過後、または離婚や死別などで婚姻が解消してから300日以内に生まれた子は、婚姻中に妊娠したと推定される。子の福祉のために、法律上の父子関係を早期に決定し、子の身分を安定させるためという趣旨で1898年に定められたものである。父子関係を否定する場合は、夫が子の出生を知った時点から1年以内に嫡出否認の訴えを起こすことが認められているが、この方法によって否定されない限り、血縁関係の有無に関わらず父子関係は否定されない。また、1年の期間経過後は否定できないものとされている。例外として、最高裁判所は判例で、事実上の離婚や遠隔地の居住などで、妻の妊娠の時期に夫の子を懐妊する可能性がなかったことが明白な場合には、嫡出推定は適用されないとしている。2007年5月に、離婚後300日以内に出生した子でも、離婚後に懐妊したことが医学的に証明できれば、前夫を父としないという法務省の通達が出された。しかし、その後も、同規定が離婚や再婚が増加した近年の社会情勢に合わないとする指摘がある。最近では、DNA鑑定による父子の血縁関係の証明方法があるが、14年7月17日、最高裁はDNA鑑定をもとに父子関係の解消を求めた3件の訴訟について、DNA鑑定で血縁が否定されても法的な父子関係は取り消せないと判断。5人の裁判官は3対2で意見が分かれたが、嫡出推定の例外にあたらないとする判決を下した。