乳がんの予防を目的として、がん発症前に乳房を切除する手術。予防的乳房切除とも呼ばれる。乳がん患者の5~10%は、BRCA1、BRCA2という、がん抑制の働きを持つ二つの遺伝子に変異がある遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)とされ、その場合、70歳までに56~87%の人が乳がんを発症するといわれる。乳房予防切除は、そうした人が乳房内の乳腺などを摘出する処置を受けることで、発症リスクを大きく下げることができ、未発症者の心理的負担を軽減する手段として注目が高まりつつある。一方で、発症リスクには個人差があることや、生存率改善についての有効性は定かではないことから、実施に際しては慎重な検討が必要。2013年5月には、アメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーが両乳房の予防的切除、再建手術を受けたことを公表し、大きな話題を呼んだ。日本ではこれまで、未発症の人に対する予防的切除は行われてこなかったが、5月20日時点で、がん研究会有明病院(東京都江東区)と聖路加国際病院(東京都中央区)で実施の準備を進めていることが報じられた。