結核菌とらい菌以外の抗酸菌によって引き起こされる呼吸器の感染症の総称。結核とは異なり、人から人には感染しない。非結核性抗酸菌は水や土に広く生息しており、呼吸器や消化器を通じて感染すると考えられている。150種類以上が確認されており、そのうち十数種類が人の病気の原因となる。中でも、日本では、MAC菌が原因の肺MAC症が7割以上を占めると言われている(MACとはマイコバクテリウム・アビウム・コンプレックスの略で、マイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーレの2種類を指す)。非結核性抗酸菌症は、初期には自覚症状がないことが多く、進行すると、せきやたん、血たん、息切れといった呼吸器症状が見られ、重症になると発熱、倦怠(けんたい)感、体重減少などの全身症状が現れる。より重症化すると肺の組織が破壊されて空洞化し、呼吸困難から死に至ることもある。日本では年間1000例ほどの死亡が報告されている。結核よりも進行が緩やかで、10~20年かけて重症化する。治療は薬物療法が主体で、原因菌に応じて3~4種類の服用剤が用いられるが、確実に有効な治療法ではない。2016年6月、慶應義塾大学医学部感染制御センターの長谷川直樹教授らのグループが行った調査の結果、日本国内での非結核性抗酸菌症の罹患(りかん)率が急増していることが判明。調査によると14年の推定患者数は10万人あたり14.7人で、7年間で2.6倍になっていた。高齢化や診断精度の向上などが増加の理由であるとも考えられているが、詳しい原因は明らかになっていない。