法律上は麻薬や覚醒剤、向精神薬に指定されていないものの、それらと同様に中枢神経系に作用して興奮や幻覚などを引き起こす薬物の総称。法規制の網をかいくぐるねらいから、成分は麻薬や覚醒剤と一部が異なる化学構造を持ち、ハーブやお香、観賞用などの用途を称して、繁華街の店舗やインターネットで販売されている。麻薬、覚醒剤と同等に、あるいはそれ以上に依存性、有害性が高く、意識障害や嘔吐(おうと)、けいれん、呼吸困難、内臓障害などを引き起こす危険があり、死亡する例も少なくない。また、乱用者が暴力事件や交通事故を起こすケースも多発しており、社会問題になっている。従来は脱法ドラッグ、脱法ハーブなどと呼ばれていたが、あたかも合法で危険性が低いと誤解を与えるおそれがあるという理由から、2014年7月に警察庁と厚生労働省が呼称を「危険ドラッグ」に定めた。また、法規制の強化も進んでおり、13年2月には、基本構造が似た成分を指定薬物として包括規制する制度を厚生労働省が導入。14年4月には改正薬事法が施行され、製造や販売に加えて、個人での所持、使用も禁じられた。さらに、同年11月に成立した改正薬事法では、指定薬物の疑いがあるものだけではなく、指定薬物と同等以上に毒性がある疑いが強い物品も販売停止命令の対象としたうえ、広域での規制が必要と判断された場合には、個々の業者単位ではなく全国一律で販売禁止にできるとした。ただ、こうした規制強化の動きにもかかわらず、若者を中心に危険ドラッグが蔓延(まんえん)する状況には十分な歯止めがかかっておらず、警察庁の調べでは危険ドラッグの使用を原因とした14年の死者数は全国で100人を超えて、13年の10倍以上に達した。