人体の本来蓄積されるべきではない場所にたまった脂肪のこと。皮下脂肪、内臓脂肪に次ぐ第三の脂肪として注目されている。脂肪の多くは通常、皮下脂肪、内臓脂肪として脂肪細胞に蓄えられる。しかし、エネルギーの取り過ぎや運動不足などによって、脂肪細胞では蓄えきれなくなった余分な脂肪は、心臓や肝臓、膵臓(すいぞう)、骨格筋など、通常は脂肪がたまらない場所にたまってしまう。これが、異所性脂肪である。心臓にたまった脂肪からは、心臓の冠動脈に向かって毛細血管が伸びていく。この毛細血管を通して、白血球の一種であるマクロファージから毒素が送り込まれ、冠動脈を破壊して心筋梗塞(こうそく)を引き起こす要因となる。マクロファージが、巨大化した脂肪細胞を異物とみなし、これを溶かそうとして出す毒素が心臓にも流れ込み、血管を破壊するのである。これが、心臓を内側から食い破るエイリアンのようであるため、異所性細胞は「エイリアン細胞」とも呼ばれる。心臓のほか、膵臓や骨格筋にたまると糖尿病、肝臓にたまると脂肪肝といったように、異所性脂肪は生活習慣病を引き起こす要因となることが明らかになってきた。日本人には、やせている人たちの間でも、肥満が主な原因となる生活習慣病が多い。その原因として、異所性細胞が関わっているのではないかと考えられている。