平成28年熊本地震によって大きな被害を受けた、熊本市の熊本城飯田丸五階櫓(いいだまるごかいやぐら)をかろうじて支え、倒壊を防いでいる石垣のこと。熊本城は慶長時代(1596~1615年)に戦国武将の加藤清正によって築城された城で、石垣には直方体の石を交互に組み合わせて重ねていく「算木積み」という技術が用いられた。石垣の上に築かれた建築物のうち、飯田丸五階櫓は城の南側を守る要で、明治時代になって破却されたが、1998年から始まった熊本城復元整備計画の一環として、2005年に木造で復元された。熊本地震では、16年4月14日の前震と16日の本震によって櫓の下の石垣が崩れたが、櫓の角には8個ほどの石が積み重なった柱状の石組み部分が残り、櫓の重量約35トンの大半を支える形となった。この様子が、11年3月に発生した東日本大震災で津波に耐えた「奇跡の一本松」(岩手県陸前高田市)を思い起こさせることから、「奇跡の一本石垣」と呼ばれるようになった。熊本市は16年6月から櫓の倒壊を防ぐ応急工事を開始。高さ約14メートル、長さ約33メートルの鉄骨を組んで櫓を覆い、櫓の下に3本の支柱を差し入れるなどの作業を行ない、7月29日に応急工事が完了。今後は本格的な復旧工事を予定している。