個人ごとの被曝放射線量。放射線の痕跡を残す特殊なガラス素材でできたガラスバッジなどの個人線量計で測定できる。2013年11月11日、政府は福島第一原発事故で避難を余儀なくされている住民の帰還に向け、原子力規制委員会の提言を受けて、放射線量の安全性の目安を空間線量から個人線量に転換すると発表。福島県では、個人線量計を住民に配布し、個人線量の調査を開始した自治体もある。政府がこれまで目安としてきた空間線量は、ヘリコプターやモニタリングポストで空気中にある放射線の時間あたりの線量(空間線量率)を調査し、これを基に、住民が1日8時間屋外にいる前提で数値を推計していた。同委員会は測定方法の転換の理由を、個々人の被曝線量を正確に把握し、被曝による健康影響を判断するためとしている。しかし、個人線量は空間線量率による線量に比べ、3分の1~7分の1と低い数値を示す傾向がある。そのため、測定方法の転換は、政府が除染の長期目標としている、「追加被曝年間1ミリシーベルト以下」の実質的な緩和につながりかねないとの批判がある。