広島市の病院に勤務していた理学療法士の女性が、妊娠を理由に不当に降格させられたとして病院の運営元を訴えた民事訴訟。新聞報道などでは、マタハラ訴訟、マタハラ降格訴訟などとも呼ばれる。女性は2004年に勤務していた病院で管理職の副主任に昇格。08年に第2子を妊娠したため、身体的な負担の軽い業務への異動を希望したところ、異動後に管理職を外され、育児休業からの復職後も再度昇格することはなかった。そのため、病院側の決定は男女雇用機会均等法が禁じる不利益処分だとして、約170万円の損害賠償を求めて10年に病院側を提訴した。広島地裁による12年2月の一審判決では、病院側が女性の同意を得たうえで事業主としての裁量権の範囲内で行った処分だったとして、女性の訴えを棄却。同年7月の広島高裁での二審判決も、一審判決を支持した。しかし、14年10月に最高裁が下した上告審判決では、妊娠を理由とした降格は原則として違法であり、女性が自由意思で承諾しているか、業務上の特段の事情がある場合以外は無効とする判断を示した。そのうえで、二審判決を破棄して審理を広島高裁に差し戻した。妊娠や出産を理由としたいやがらせや不当な待遇がマタニティーハラスメント(マタハラ)として社会問題になるなか、具体的に何が違法となるか最高裁が判断基準を示したのは初めてで、企業などの対応に影響を与えると注目されている。