刑事事件の取り調べの録音、録画(可視化)や司法取引の導入などを柱とした改正刑事訴訟法などの法律。2016年5月24日の衆議院本会議で可決、成立した。冤罪(えんざい)を防ぐことを目的とした取り調べの可視化は従来、検察や警察が試験的に行ってきたが、刑事訴訟法等の一部を改正する法律では殺人や傷害致死など裁判員裁判の対象事件と、検察の独自捜査事件で逮捕、勾留された容疑者の取り調べにおける全過程で義務付けられた。ただし、任意捜査の段階での取り調べは対象に含まれない。また、録音などによって十分な供述が得られなくなると判断された場合や、容疑者が拒否した場合などは例外として録音、録画はしなくてもよいとする。義務化されるのは法律の公布後3年以内。また、司法取引は、共犯者など他人の犯罪を明らかにするなどして捜査に協力した場合、容疑者の求刑を軽くしたり起訴を見送ったりできる制度。刑事訴訟法の改正に盛り込まれた。贈収賄や詐欺、脱税、薬物、銃器などの事件が対象となる。欧米では一般的な捜査手法だが、日本で導入されるのは初めて。容疑者や被告が自らの罪を軽くしようとして、うその供述などを行った場合は5年以下の懲役となる。また、取引の際には弁護士の立ち合いが義務付けられた。1999年に成立した通信傍受法も改正され、従来は組織的な殺人や銃器の取引など4種類に限られていた傍受の対象を、振り込め詐欺などの組織的な詐欺や窃盗、放火など13種類に拡大。テロ対策などに役立つことが期待される一方で、傍受内容の暗号化などを行えば、通信事業者の立ち会いなしで、通信事業者の施設外でも行うことができることから、捜査機関の権限の強化につながるため批判がある。