2016年7月26日、神奈川県相模原市の知的障害者施設で入所者らが殺傷された事件。同日午前2時過ぎ、重度の知的障害者を中心に約150人が入所していた「津久井やまゆり園」(同市緑区)に男が侵入し、持ち込んだ刃物で次々と入所者を襲い、19人が死亡、職員2人を含む26人が重軽傷を負った。亡くなったのは、41~67歳の男性入所者9人、19~70歳の女性入所者10人。殺人事件としては、戦後最多の犠牲者を出す事態となった。男は同施設の元職員だった植松聖(さとし)容疑者。午前3時過ぎに同県警津久井署に出頭し、殺人未遂と建造物侵入容疑で緊急逮捕された。供述などから、植松容疑者が同施設東棟1階の窓ガラスを割って侵入し、結束バンドで職員を縛り付けたうえで犯行に及び、約50分の間に45人を襲ったことが判明。同警察署の捜査本部は翌27日、容疑を殺人に切り替えて、容疑者を横浜地方検察庁に送検した。その後の調べで、植松容疑者が16年2月14~15日に衆議院議長公邸を訪れ、警備中の警察官に事件を示唆する内容の手紙を渡していたことがわかった。また、同月18日には同施設の職員に対して、障害者を殺したほうがいいといった趣旨の発言をしたため、施設は翌19日、警察に通報するとともに容疑者を自己都合で退職させている。警察は「他人を傷つけるおそれがある」と判断して相模原市に通報し、市は容疑者を措置入院させる対応を取った。措置入院とは、精神保健福祉法に基づき、2人以上の指定医の判断があれば、精神疾患のために自分や他人を傷つけるおそれがある患者を、都道府県知事の決定で強制入院させることのできる措置のこと。入院先の病院は、容疑者の尿検査で大麻の陽性反応が出たため、入院を継続させたが、12日後の3月2日には症状がなくなったとして退院させていた。なお、大麻反応や退院について施設や警察に伝えられていなかったことや、容疑者に対して退院後のフォローがなかったことなどから、県や市、警察、施設などの間で情報共有や連携が不十分だったことが問題視されている。厚生労働省は事件を受け、同様の事件の再発を防止すべく、措置入院制度や運用のあり方の見直しを検討することとした。