がん患者とその家族の心のケアや、がんと心の関係を研究する学問。名称は、英語で「心理学」を意味する「psychology(サイコロジー)」と、腫瘍学を意味する「oncology(オンコロジー)」を組み合わせた造語。がんの告知を受け、死の恐怖と向き合うことを強いられるがん患者は、そのストレスから、不安や抑うつ、食欲不振、睡眠障害などに悩まされるケースが多く、患者の10~30%がうつ病や適応障害と診断される。また、患者の家族も心労などから精神的不調に陥ることが少なくない。1970年代に欧米で発達した精神腫瘍学では、従来のがん治療では見落とされがちだった患者、家族の心の病気に対し、医師によるカウンセリングや、抗不安薬、抗うつ薬などの処方、患者同士によるグループ療法などの治療を行う。同時に、心理的、社会的要因が、がんの発症や再発、治療経過、生存に与える影響も研究する。日本では、86年に日本臨床精神腫瘍学会(現・日本サイコオンコロジー学会)が設立され、95年には静岡県の国立がんセンターに日本初となる精神腫瘍学研究所が設置された。