体外受精でできた受精卵の染色体異常の有無を子宮に戻す前に調べる検査。重い遺伝性疾患につながる異常を調べる着床前診断とは異なり、主に不妊症の人や流産を繰り返す人などを対象として、妊娠する確率を向上させるために行われる。検査では、母体から採取した卵子を体外で受精させ、流産や不育症につながる染色体異常がないかを検査。その可能性が低い受精卵を子宮に戻す。この検査では近年、染色体の一部のみを顕微鏡で調べる従来の検査技術に代わり、機械を使って全染色体を網羅的に検査するアレイCGH法と呼ばれる技術が欧米などで普及。この技術が妊娠率の向上に有効とする研究報告も出ている。一方で、全染色体を調べれば、ダウン症などの流産以外の異常も発見できることになり、検査自体が「命の選別」につながるとする批判も根強い。日本産科婦人科学会(日産婦)の指針も、重い遺伝性疾患の子どもが生まれる可能性があるケースや、流産を繰り返す習慣流産の一部以外では、特定の遺伝子や染色体の検査を認めていない。しかし、日本国内でも一部の医療機関が指針に従わずに不妊治療の一環として独自に着床前スクリーニングを実施した例がある。また、母親の血液から胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断が2013年4月から認められており、胎児では認められて受精卵では認められないことへの疑問の声もある。こうした状況を踏まえ、同学会は14年2月にアレイCGH法の有効性を調べる臨床研究の実施について検討を開始。同年11月には、実施について倫理委員会が大筋で了承し、理事会の承認があれば15年度から実施されることになった。