明治時代に定められた民法の規定について、憲法違反かどうかが争われた2件の裁判。いずれも2015年12月16日に最高裁判所が全15人の裁判官(男性12人、女性3人)による憲法判断を示した。夫婦別姓訴訟は、民法第750条の「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とする規定が違憲であるとして、東京都在住の事実婚の夫婦ら5人が11年に提訴した。原告側は、結婚によって姓の変更を強いられるのは憲法が保障する「個人の尊重」に反すると主張。14年の調査では約96%の夫婦で夫の姓に合わせていることから、実際には女性への差別に当たり、「法の下の平等」などにも反しているとした。その上で選択的夫婦別姓制度の導入など、必要な対策を国会が怠ってきたとして国に計600万円の賠償を求めた。13年の一審・東京地裁判決は原告の請求を棄却し、14年3月の二審・東京高裁判決も一審の判断を支持。最高裁判決は、姓の変更を強制されない自由は人格権の一部にはあたらないとし、規定自体に男女不平等が存在するわけではないとして合憲との判断を示した。合憲とした裁判官は10人、違憲は5人。違憲判断の理由として、女性の社会進出などにともない婚姻前の姓を使用する必要性が増していることなどがあげられた。一方の再婚禁止期間訴訟は、民法第733条の「女は、前婚の解消又は取消しの日から6カ月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」と女性だけに再婚を禁止する規定は「法の下の平等」に反するとして、岡山県の女性が11年に提訴したもの。同規定は離婚後すぐに再婚した女性が子どもを産んだ場合、父親が誰であるかをめぐって争いになるのを避ける目的で定められた。一審・岡山地裁、二審・広島高裁岡山支部ともに原告の請求を退ける判決を出しており、原告側が上告していた。最高裁判決では、規定の目的には合理性があるとしつつ、医療や科学技術の発達、社会状況の変化などから100日を超える禁止期間については過剰な制約であるとして15人の裁判官全員が違憲と判断した。