不妊の人に対して行われる妊娠を目的とした治療。世界保健機関(WHO)の基準では、避妊をせずに性交しているにもかかわらず、2年以上、妊娠にいたらない状態を不妊としている。不妊にはさまざまな原因が考えられるため、治療を望む人はまず原因特定のための検査を受ける必要がある。女性の場合は卵巣、卵管、子宮の異常や性感染症の有無などを、男性の場合は精巣、精管、精液の異常などを検査する。生殖器官や生殖機能に異常が見つかった場合には、排卵誘発剤などの薬物療法、ホルモン療法や手術などが行われる。こうした方法では妊娠が難しいときには、精子を人工的に子宮内に送り込む人工授精(AIH)や、卵子と精子を採取して体外で受精させてから子宮に移植する体外受精(IVF)などの手段も用いられる。日本国内で不妊治療を実施する施設は約600カ所存在し、2010年には約24万2000件が実施された。ただ、人工授精や体外受精などは公的医療保険の適用外で、特に体外受精には1回あたり数十万円の費用がかかるなど、患者の経済的負担が大きい。2004年には少子化対策の一環として、体外受精と、卵子に針を刺して精子を直接注入する顕微授精について、国が費用を一部助成する制度が始まり、現在は5年間で10回まで、1回あたり最大15万円を助成している。しかし、近年の晩婚化・晩産化の影響もあり、11年度には助成対象が11万件と制度開始時の6倍以上に増加。そのため、厚生労働省では、助成の年齢制限や期間の集中化など効果的な助成のあり方について議論する検討会を13年4月に設置した。