特定の人種や民族への差別をあおるヘイトスピーチの解消を目的とした法律。正式名称は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」。2015年に民主党、社民党などが禁止規定を盛り込んだ「人種差別撤廃施策推進法案」を提出していたが、与野党で合意に至らず採決が見送られた。それに対して自民、公明両党が禁止規定のない理念法として、16年4月に法案を提出し、同年5月24日の衆議院本会議で可決、成立した。同法ではヘイトスピーチを、適法に日本に居住する外国出身者やその家族を対象に、差別を助長、誘発する目的で生命や身体に危害を加えると告知したり著しく侮蔑したりして、地域社会からの排除を扇動する言動と定義。こうした言動の解消に向けた取り組みや、相談体制の整備、教育や啓発の充実を国や自治体の責務とした。言動の禁止規定や罰則は条文に盛り込まれておらず、実効性を疑問視する声も上がっている。また、保護の対象を適法な日本以外出身の居住者に限定していることに対し、審議段階で野党は不法滞在者やアイヌへの差別が野放しになると批判。そのため、憲法や人種差別撤廃条約の趣旨に照らして国などに適切な対処を求める付帯決議も採択された。なお、川崎市は、同市で6月5日に予定されていたヘイトデモによる公園使用を不許可とした。