新種のMERSコロナウイルス(MERS-CoV)が引き起こす感染症で、正式名称は中東呼吸器症候群。2012年9月に初めて感染が確認され、その後、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダンなど、中東諸国を中心に感染者の報告が相次いだことから、13年5月にウイルス分類に関する国際委員会(ICTV)が病原体名などを命名した。感染すると、発熱、せき、息切れなど、急性の呼吸器症状を起こし、多くの患者が肺炎になる。また、消化器症状や腎不全などを引き起こすケースも報告されている。03年に中国を中心に猛威を振るった重症急性呼吸器症候群(SARS)と同様、コロナウイルスの一種による感染症で、SARSウイルスほど感染力は強くないものの、ヒトからヒトへの感染が強く疑われている。ただ、感染源や感染経路などはまだ解明されていない。13年4月以降、感染が拡大しており、同年6月8日時点で中東やヨーロッパの9カ国で計55人の患者が報告された。そのうち、31人が死亡し致死率が非常に高いことから、世界保健機関(WHO)などが注意を呼びかけている。