火山の火口付近や温泉などから噴出したり、汚水処理などの際に化学反応によって発生したりする硫化水素ガス(二酸化硫黄、火山性ガス)を吸い込むことによって生じる中毒。硫化水素は、腐った卵のような臭いがする無色で有毒の気体で、目やのどの粘膜を刺激したり、中枢神経の働きを妨げたりする。国の基準では許容濃度が10ppmとされており、20ppmを超える硫化水素ガスを吸い込むと嗅覚のまひや目の損傷などが起こり、100~300ppmの硫化水素に8~48時間連続でさらされると、気管支炎や肺水腫などにより窒息死することがある。2014年10月、北海道足寄町の温泉施設で入浴中の男性が硫化水素中毒とみられる脳機能障害で意識不明に陥る事故が発生。15年9月に環境省が行った調査では、同施設の浴槽の湯面から上方10センチの硫化水素ガス濃度が基準値20ppmの10倍に当たる200ppm、床面から上方70センチでは基準値10ppmの20倍に当たる200ppmと測定された。同省では16年9月、事故の再発防止に向けた専門家の検討会を設置し、同年度内に国の基準を見直すとしている。