左右の恥骨をつなぐ結合部が炎症を起こして痛む病気。恥骨は骨盤を形成する骨の一部で、体の前面で左右二つの骨が軟骨によって結合している。恥骨には腹直筋や内転筋などの筋肉やいくつかの靭帯(じんたい)が付着しているため、下半身を動かすときに結合部に負荷が集中しやすい。ランニングやキック動作などの繰り返しによって過度の負荷がかかると、結合部に炎症が生じ、恥骨周辺や足の付け根、下腹部に痛みが出る。特に足の運動が多いサッカーや陸上競技の選手がなりやすいことで知られ、元サッカー日本代表の中山雅史も現役時代に恥骨結合炎に悩まされた。また、女性の場合は出産時の骨盤の開きが原因で発症することがある。発症後は通常、数週間の運動休止や患部の冷却、鎮痛剤の投与などが行われ、慢性化した場合は手術も検討される。恥骨結合炎をはじめ、大腿内転筋付着部炎、腹直筋付着部炎、鼠径(そけい)ヘルニアなど、恥骨周辺に発生する痛みを総称して鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)と呼ぶこともある。