寄生虫のアニサキスを原因とする人畜共通感染症。アニサキス症とも呼ばれる。アニサキスは、クジラやイルカなどの海生哺乳類を終宿主とする寄生虫で、その幼虫はサバやサケ、スルメイカなどの中間宿主に寄生する。寄生された魚介類をヒトが生で食べると、幼虫が生きたまま胃や腸に達することがあり、胃壁、腸壁に侵入しようとして激しい腹痛や吐き気を引き起こす。多くの場合、食後8時間以内に症状が出る。効果的な治療薬はなく、感染した場合には内視鏡や外科手術によって摘出を行う必要がある。魚介類を生食する機会が多い日本で特に多い病気といわれ、流通の発達などによって多くの魚介類が生食可能になったことから、近年では都市部でも感染例が増加。厚生労働省の発表によると、2008年に報告されたアニサキス食中毒は14件だったが、12年には65件と5年間で約5倍に増加している。予防には、十分な加熱や48時間以上の冷凍が有効。幼虫は寄生する魚などが死ぬと内臓から筋肉へ移動する性質があるため、新鮮なうちに内臓を取り除くことも重要になる。